透明な秘密
2025年07月24日 22:05
彼女が彼に心の奥底の秘密を語ろうとしたその瞬間、突然、二人の間に響き渡るような音がした。まるで何かが崩れ落ちるような轟音。驚きに目を見開いた彼女は、きっと二人の未来が揺らぐのではないかと怯えた。
「何だろう、今の音は？」と、彼女が言うと、彼は真剣な表情を浮かべながら答えた。「あれは、おそらく建物の一部が崩れた音だ。でも…」
彼が言いかけた瞬間、周囲が急に暗くなり、まるで昼間のような明るさが一瞬にして消えてしまった。次の瞬間、二人の目の前に現れたのは、異世界から来たかのような不思議な存在だった。その姿は、彼女が夢見たことのある幻想的な生き物に似ていたが、その瞳は覚悟を秘めた鋭さを持っていた。
「あなたたちが求めているものを知っている。だが、手に入れるためには試練を乗り越えなければならない」とその声は響いた。彼女は心臓が高鳴るのを感じた。試練？ それは一体何だろう？ 彼女の心の中にある葛藤と向き合わなければならないのだろうか。
彼女と彼は顔を見合わせた。互いの心の奥底でくすぶっていた問いを、切実に感じていることを理解していた。そう。このまま同じ日常を続けることは、どこか不完全だった。二人は言葉を交わさずとも、心の中で同じ思いを抱いていた。
彼女は躊躇う暇もなく、その存在に導かれるように進んで行った。彼もその背中を追った。二人が導かれた先は、色とりどりの光が舞う異世界だった。そこには彼女の心の奥に秘めた思い出が具現化されたような風景が広がっていた。かつて大切に思っていた人々の顔がその中に混ざり、彼女を懐かしさと同時に、未練で満たしていく。
「あの人たちを忘れられない、でも、今の私も大切にしないと…」彼女は内心で思った。しかしその瞬間、彼女の前に一つの選択肢が現れた。目の前に倒れた彼女の以前の恋人が、薄暗い影の中から彼女の手を引こうとしている。その瞬間、彼女は心の奥で何かが決まるのを感じる。
「私を忘れて、今の幸せを選んで！」彼女は声を振り絞った。その言葉が空気に溶けると、目の前の幻影は消え去った。代わりに、彼女の背後から彼が彼女の手を優しく握っているのを感じた。
「君が選んだ道を、僕も一緒に行くよ。」彼が言った。彼女はその言葉に深い安堵を覚えたが、心の中ではまだ葛藤していた。それでも、彼女は運命の重荷を少しだけ軽くできたような感覚を抱えていた。
続く
しょうこ
