秘めた思い
2025年08月02日 09:09

コトン…と、湯呑を置く音が静かな朝に響く。
縁側の椅子に座り、まだ少し熱の残る茶をすする。
目の前には、夏の陽射しにきらめく庭の緑。けれど、心はどこか遠くの景色を見ていた。
「いつ戻ってくるのかしら…」
思わずこぼれた言葉に、自分でも驚く。
主人は今、遥か異国の地。
日々のやりとりは短く、淡々としていて、言葉の間に漂う静寂が、ふと寂しさを呼び起こす。
その隙間に差し込んでくるのは、誰にも語れない想い。
あの人の声、あの人の眼差し――
ほんの一瞬の記憶が、胸の奥に火を灯す。
それは恋とも言えず、罪とも言えない、ただ静かに募ってゆく感情。
誰にも見せない微笑みをそっと浮かべて、
彼女はまた、ひとりの時間に身を委ねる。


