主人の知らないはづき
2025年08月25日 08:07

久しぶりに帰ってきた主人が、隣で静かに眠っている。
長い出張の疲れが滲む寝顔を見つめながら、胸の奥に複雑な感情が湧き上がる。
この人は、私の変化に気づいていない。
唇にまだ、昨夜の熱が残っていることも。
身体の奥が、別の誰かの感触を覚えていることも。
「おかえりなさい」と微笑んだ私に、彼はただ「ただいま」と応えただけ。
その声に愛情がないわけじゃない。けれど――
女として求められる喜びを知ってしまった私には、どこか物足りない。
朝の光がシーツを白く照らし出す。
主人の寝息を聞きながら、指先で自分の手首を撫でると、そこには先日の彼がつけた跡がまだ薄く残っていた。
胸の奥で、罪悪感と甘美な余韻が絡まり合う。
――こんな私を、主人はきっと知らない。
そして、知らないままでいてほしいと思う自分がいます。


