はづきの朝
2025年09月09日 06:24
空がほんのりと白み、まだ街が目を覚ます前の静けさが家の中を包んでいる。
窓を少し開けると、夜の名残を含んだ生ぬるい風が頬を撫でた。
はづきは、ベッドの端に腰かけて、ゆっくりと深呼吸をする。
心は穏やかでありながら、身体の奥には言葉にできないざわめきが残っていた。
理性と感覚のあいだで揺れる、ひとりの女の朝。
台所に向かえば、いつもと同じ朝食の準備が待っている。
けれど、胸の内側だけが、まだ夜の続きを思い出していた。
――静かな朝。
何も変わらないはずなのに、内側の熱だけが、確かにそこにある。