はづきの目覚めゆく身体
2025年07月24日 06:42
五十を迎えた頃から、はづきは自分の身体の変化に気づき始めていた。
些細なこと——風に触れる素肌、浴室で流れる湯の音、絹の下着が肌を撫でる感触。それだけで、胸の奥がふわりと疼く。以前は何でもなかったはずの刺激が、まるで初めて知る悦びのように響いてくるのだ。
「…こんなはずじゃなかったのに」
鏡の前でそっと自分に触れると、そこは信じられないほど敏感になっていた。優しくなぞっただけで、甘い吐息がもれてしまう。
——あの夜から。
年上の男性。穏やかで礼儀正しい彼が、ある夜、はづきに見せたもう一つの顔。丁寧で、だが確かに導かれるような指先。恥じらいとともに委ねてからというもの、はづきの中で何かが目覚めてしまったのだ。
それは「女」としての悦びであり、心の奥にずっとしまい込んでいた欲望だったのかもしれない。