願望
2025年09月21日 01:11
真夜中――
時計の針は無情にも進み、部屋は深い静寂に包まれている。
はづきの胸の中では、昼間から募った欲求が今まさに爆ぜそうで、布団の重ささえも窮屈に感じられた。
「抱かれたい…」
囁きにもならない声が唇の端で震える。想像は容赦なく現実を侵食し、誰かの腕に包まれる感覚、肩に落ちる温もり、胸に耳を寄せられたときの安心感が鮮やかに迫る。
窓の外の街灯がほのかに差す中、はづきは枕を抱き締める。ぬくもりの代わりに自分の手を取り、呼吸を合わせるようにゆっくりと体を揺らした。指先が布団の織り目をなぞるたびに、期待と切なさが交互に胸を締めつける。
真夜中の静けさは残酷でもあり、優しくもある。誰も知らないこの時間に、はづきの内側だけが激しく生きている。