抱かれたい
2025年10月01日 12:07

雨の中――。
傘を差し、足元を濡らしながら、はづきは秘密のバイトへと歩いていく。
冷たい雨粒が頬をかすめるたび、胸の奥でトクトクと脈が高鳴った。
「誰も、私の行き先なんて知らない……」
そう思うと、足取りはますます軽くなる。
傘に当たる雨音が鼓動をかき消し、街の人々の視線も、ただの日常を生きる顔。
そんな中、自分だけが違う世界へ向かっている。
ワクワクとドキドキが混ざり合い、
雨で湿った空気までも甘い香りに感じられる。
スカートの裾に雨粒が跳ねて、太腿を冷たく撫でる。
その冷たさと、身体の内側に広がる熱が交差して、
ますます敏感になっていく。
「早く……抱かれたい……」
誰にも聞こえない小さな呟きが、雨音に紛れて消えていった。
けれどその言葉こそ、はづきの本当の欲望だった。


